令和8年10月1日から、同一労働同一賃金ガイドラインの改正にあわせて、パートタイム・有期雇用労働者に交付する労働条件通知書の内容が見直されます。
「労働条件通知書に一文追加すれば終わりでは?」
このように考える企業も少なくありません。
しかし、今回の改正で本当に重要なのは、労働条件通知書の様式変更ではなく、待遇差を説明できる体制を整えることです。
この記事では、改正内容に加え、中小企業が実務上どのような準備を進めるべきかを、社会保険労務士の視点から分かりやすく解説します。
労働条件通知書とは
労働条件通知書とは、労働契約を締結する際に、賃金や労働時間、休日などの労働条件を労働者へ明示するための書類です。
労働基準法第15条に基づき、事業主には労働条件を明示する義務があります。また、パートタイム・有期雇用労働法では、短時間・有期雇用労働者に対して、通常の労働者との待遇差の内容や理由について説明する義務が定められています。
今回の改正は、この「説明」に関する制度をさらに実効性のあるものとするための見直しです。
令和8年10月改正のポイント
改正後は、パートタイム・有期雇用労働者に交付する労働条件通知書などに、「待遇の相違の内容及び理由について説明を求めることができる」旨を明示することが求められます。
これは単なる文言の追加ではありません。
企業には、労働者から説明を求められた際に、合理的かつ具体的に説明できる体制を整備することが求められます。
つまり、「説明を求める権利」を労働者へ分かりやすく伝えるとともに、企業側には「説明できる準備」が必要になるということです。
「説明できます」と書くだけでは不十分
実務では、「通知書に一文追加すれば改正対応は終わり」と考えてしまうケースがあります。
しかし、それでは十分とはいえません。
例えば、パート社員から次のような質問を受けたとします。
なぜ住宅手当は正社員だけなのですか。
なぜ賞与の支給額が異なるのですか。
なぜ退職金制度の対象外なのですか。
このとき、「会社のルールだから」「昔からそうだから」といった説明では、不十分と判断される可能性があります。
待遇差の理由が、職務内容、責任の程度、配置転換の範囲、その他の事情を踏まえて合理的に説明できることが重要です。
労働条件通知書の見直しとあわせて確認したい書類
労働条件通知書だけを修正しても、実際の運用と整合していなければ意味がありません。
この機会に、次の書類もあわせて確認しましょう。
就業規則
パートタイム就業規則
有期雇用社員就業規則
賃金規程
賞与規程
退職金規程
各種手当の支給基準
雇用契約書
これらの内容に矛盾があると、説明が難しくなる場合があります。
中小企業が見落としやすいポイント
1 手当の支給目的が明文化されていない
住宅手当や家族手当などは、支給目的によって合理性の判断が異なります。
「何のために支給しているのか」が規程に記載されていない企業は、今回の改正を機に整理しておくことをおすすめします。
2 実際の運用が規程と異なっている
例えば、賃金規程では「人事評価に応じて賞与を決定する」と定めていても、実際には全員へ一律に同額を支給しているケースがあります。
裁判などでは、規程よりも実際の運用が重視されることがあります。
書類だけでなく、運用状況も見直すことが大切です。
3 管理職が説明できない
従業員から待遇差について質問された際、現場の管理職が説明できないというケースも少なくありません。
制度を整備するだけでなく、管理職や人事担当者が制度を理解していることも重要です。
企業が令和8年10月までに取り組みたいこと
改正までに、次の点を確認しておきましょう。
労働条件通知書の様式を見直す
パート・有期雇用労働者向けの通知書を更新する
正社員との待遇差を一覧表に整理する
各種手当の支給目的を明確にする
賃金規程・就業規則との整合性を確認する
説明を求められた場合の対応手順を決める
管理職や担当者へ制度の周知を行う
これらを事前に整理しておけば、改正後も落ち着いて対応できます。
社会保険労務士からのアドバイス
今回の改正は、「労働条件通知書に一文追加すること」が目的ではありません。
企業が、自社の待遇制度を改めて見直し、「なぜその違いがあるのか」を説明できるようにすることが本来の目的です。
待遇差に合理的な理由があり、それを規程や運用の中で一貫して説明できる企業は、必要以上に不安を感じる必要はありません。
一方で、「昔からそうしている」「前任者から引き継いだだけ」といった曖昧な運用は、将来的な労務トラブルにつながる可能性があります。
大津市で労働条件通知書の見直しをご検討の事業主様へ
令和8年10月の制度改正は、労働条件通知書だけでなく、就業規則や賃金規程、各種手当の支給基準など、労務管理全体を見直す良い機会です。
当事務所では、
労働条件通知書の作成・見直し
就業規則・賃金規程の整備
同一労働同一賃金への対応
パートタイム・有期雇用労働者の待遇差の確認
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制度改正に伴う労務相談
など、中小企業の実情に応じたサポートを行っています。
制度改正への対応に不安を感じている事業主様は、お気軽にご相談ください